建設業・造園業の方へ

税理士法人ファリス「開業・会社設立相談所」では、新規の起業だけでなく、個人事業主の方から法人化のご相談を頂くことがあります。そのように個人事業主から株式会社や合同会社に成りかわることを「法人成り」と言います。

しかし、多くの方が「取引先に法人化をすすめられたけど、どうしていいかわからない」「今までは家族に経理を頼んでいたけど手に負えなくなった」「社会保険の手続きって難しい?」など…不安を抱えています。

特に建設業(大工、電気工事、水道工事、内装業、リフォーム業や外構、造園業など)に従事している方の中には、独立して一人親方として活躍しているうちに仕事の規模が大きくなっていき、法人化を検討される方が多くいらっしゃいます。

今回は、建設業の一人親方が法人成りする際の注意点や税理士法人ファリス「開業・会社設立相談所」が行なっているサポートについてお伝えします。

建設業に従事している方の多くは、一定の修行期間を終えると、独立を選択します。独立してすぐは、従業員を雇用せず、個人または家族のみで事業を行う一人親方となります。一人親方のほとんどは法人化せずに個人事業主として活動をしています。

一人親方の場合、利益は自分のものになりますし、仕事を受けるか受けないかなどの裁量も自分にあります。そのため、沢山働いて稼ごう…のんびりやっていこう…など自分らしい、自由な働き方ができます。

一方で、一人親方というのは名ばかりで、職人として日給月給の仕事を受けているにも関わらず、労災保険も雇用保険もなく、雇用されているより条件が悪いような労働環境に陥ってしまう可能性もあります。特別加入により労災保険に入ることはできるので、保険組合に加入するなど、自分の身を守る術は身につけておいた方が良いでしょう。

一人親方であっても、案件ごとに職人を集めて大きな仕事を受注することもありますが、仕事の規模が大きくなったら職人の雇用や法人化を視野に入れた方が良さそうです。

法人化をすると、法人との契約がとりやすくなります。また、公共事業の入札への参加など、仕事の規模や仕事の幅が広がり、売り上げを増やすことが可能になります。取引先から「社会保険に加入している法人としか取引できないから法人化してほしい」と言われて法人化するケースがあるのも建設業の特徴です。

取引先や親会社がしっかりある場合は、初めから売り上げの見込みがたっていますので、法人化はメリットが多いと言えます。

また、税制面でのメリットも見逃せません。建設業は、売り上げ金額が高く、起業一年目でも売り上げが1000万円を超える場合が多いからです。

法人、個人に関わらす消費税は1000万円以上の売り上げがあってから2年後から発生します。個人事業主として独立して1年目に1000万円の売り上げがあった場合、その年や次の年は消費税の免除があります。3年目はその年が仮に900万円の売り上げだったとしてもその年の売上900万から仕入れなどで支払った消費税を差し引いた分の消費税を納税します。

(※ただし、資本金が1000万円以上の場合や年度始めから6ヶ月で1000万円を超えた場合は、消費税が発生する場合があります。)

個人事業主から法人成りをした場合でも、法人としての売り上げに対して上記と同じように、消費税の免除の制度があるので、会社を設立してから2年間は、消費税が免除されると考えていいと思います。

また、所得税や住民税に関しても、利点があります。法人化した場合、法人から支払われる役員報酬には、給与所得控除が適用されますので、個人事業主で所得税や住民税を納めるより支払う所得税や住民税が少なくて済む可能性が高いのです。詳しい計算は法人化シミュレーション(リンク)でさせていただきます。

一方で法人化にはデメリットもあります。法人化すると一人親方(個人事業主)時代にはなかったような経費(社会保険料の会社負担分や税務申告を依頼することによる税理士報酬など)が余計にかかります。

また、従業員の採用や教育、資金繰りなど、本業以外のマネージメントに関わる仕事が増えます。職人としての腕を磨いてきた一人親方にとっては、その力を発揮する機会が減ることを残念に思う場面もあるかもしれません。

 

建設業・造園業の方へ

個人事業から法人へは建設業許可は引き継がれないので注意してください。法人成りをした場合、法人として新たに申請をする必要があります。

また、建設業許可は一定期間以上の実務経験や経営経験が必要ですので、起業時に申請をしない場合もあります。しかし、そのような場合でも、どのような建設業許可を取得するつもりか想定しておきましょう。なぜなら、建設業許可を申請する際、定款(会社運営の基本的規則を定めたもの)の事業目的に、許可が欲しい業種名の記載が必要だからです。記載がない場合、変更登記をしなければなりません。変更登記には、登録免許税などの費用が発生してしまいます。

定款は、会社設立時に公証役場に提出して、認証の手続きを受けるものです。フォーマットに沿ってご自身で作成することも可能ですが、事業目的の内容や書き方に注意が必要な建設業の登記に関しては、専門家に作成を依頼した方良いかもしれません。税理士法人ファリスは、司法書士や建設業の許認可に詳しい行政書士とも業務提携がありますので、会社設立サポートを利用して会社設立をしていただければ、安心です。

参考:建設業29業種
1. 土木工事業 11. 鋼構造物工事業 21. 熱絶縁工事業
2. 建築工事業 12. 鉄筋工事業 22. 電気通信工事業
3. 大工工事業 13. 舗装工事業 23. 造園工事業
4. 左官工事業 14. しゅんせつ工事業 24. さく井工事業
5. とび・土工工事業 15. 板金工事業 25. 建具工事業
6. 石工事業 16. ガラス工事業 26. 水道施設工事業
7. 屋根工事業 17. 塗装工事業 27. 消防施設工事業。
8. 電気工事業 18. 防水工事業 28. 清掃施設工事業
9. 管工事業 19. 内装仕上工事業 29. 解体工事業
10. タイル・レンガ工事業 20. 機械器具設置工事業

資本金0円から起業ができると言われていますが、建設業のお客様からは、「資本金を500万円以上に設定する必要がありますか?」という質問をいただくことがよくあります。

それは、前章で触れた建設業許可に関係しています。建設業許可の要件の一つに「財産的基礎」というものがあります。

一般建設業許可の場合、「純資産の額が500万円以上あること」「500万円以上の資金調達能力があること」という要件のどちらかに当てはまる必要があります。起業と同時に一般建設業許可を申請する際、資本金を500万円以上用意すれば、条件を満たすことができます。そのため、建設業の起業の際には、資本金を500万円以上用意しましょうと言われることがあるのです。

しかし、前章でもお伝えしたように、必ずしも起業時に建設業許可の申請をする訳ではありません。そのため、建設業だからと言って500万円の資本金を用意する必要はないのです。建設業許可に関しても、通帳に500万円以上入っているタイミングで申請をすればよく、必ずしも資本金である必要はありません。

資本金として会社の口座に入金した場合、そのお金は会社のお金になります。設立後の資金繰りを考えると資本金は多い方が良いですが、無理にかき集めて、その後すぐに引き出すことはできませんので、個人の生活費や法人化後の個人の納税を圧迫しない範囲でご用意ください。

社会保険とは、「健康保険」と「厚生年金保険」を指します。個人事業主の場合も、「国民健康保険」と「国民年金」を個人の所得から負担していますが、健康保険と厚生年金保険には会社負担分があります。一人親方から法人化したときに、その金額に驚いてしまうかもしれません。従業員を雇用していれば、かなりの金額を毎月負担することになるからです。

建設業の方は、健康保険に関して、建設国保を引き継ぐことができる点を理解しておきましょう。建設国保とは、建設工事業に従事している個人事業所の事業主・従業員と一人親方を組合員とする国民健康保険組合です。

法人が加入する協会けんぽには会社負担がありますが、建設国保には会社負担がありません。そのため、資金力に余裕がないときに建設国保を引き継ぐことができると助かります。
ただし、建設国保は会社負担がない分、個人負担が多くなってしまったり、協会けんぽの方が長期入院してしまった場合の所得保障の期間が長いなどの違いがあります。そのため従業員の立場から、協会けんぽの方が良いという意見が出るかもしれません。資金力に余裕がある場合は協会けんぽに入る選択をしても良いでしょう。

建設国保は、個人事業主やその従業員が加入するものですので、会社設立前の個人事業主時代に加入しておく必要があります。また、建設国保については、さまざまな組合が存在します。組合によっては法人化の際に引継げない場合もありますので、事前に法人化後も継続して加入できるか確認しておくようにしましょう。

社会保険加入の手続きはご自身やご家族でも行えますが、従業員の分も含めると、負担になってしまうこともあります。「開業・会社設立相談所」では社労士と提携し社会保険加入サポートもうけたまわっております。

税理士法人ファリスの「開業・会社設立相談所」では、建設業の様々な業種のお客様の相談を受けてきました。そのため、建設業許可や社会保険など、業界特有の注意点などにも精通しております(手続きは提携している司法書士・行政書士・社労士が行います)ので、お気軽にご相談ください。